細い筒の中に細い鳥を入れる。 筒の向きを整え、狙いを定めて火薬に点火する。 鳥が飛んでいく。 空気抵抗で翼が広がる。 同量の火薬を使って銃弾を発射するよりも飛距離が長く、重量のため威力も高い。 欠点は、火薬の衝撃で鳥を気絶させながら射出する作り…

しょう油こぼしマシーン。 誰の視線もしょう油に向いていないときに、テーブルから機械の人差し指が出てきてしょう油の入った容器を倒す。 その音はテーブルを囲む人間の視線を倒れた容器と、テーブル上の不快な水滴へと向わせるが、銀色の人差し指は既に隠…

夜中に目をさまし、まず視界に入ったのは大きな箱だった。 以前、通販でパソコンを買ったとき、一式が入れられていたダンボール箱だ。大人が入れそうなくらいに大きい。寝ている彼の姿勢からすると頂上が見えず、どこか不気味な感触がした。 ふと思う。 もし…

卒業証書の手順がつまらない。記憶に残らない。 どうせなら、校長が生徒の名前を呼んで返事がホールに響いたあとに、大きなため息を校長がするとか、苦々しい情感のある舌打ちを校長がするとか、単純に音量だけでも不快になるようなえづきを校長がするとか、…

一が健康、二も健康、三、二がなくて、一もなし。

空白。

向こうの友達が言ってた。 血って、炭で炙って乾燥させたものを一度ばらばらにすると、ばらばらにする前の形に繋げ直しても、輸血には使えないんだって。 水分を与えて液体の状態に戻してやっても、無理。輸血には使えない。弱っちぃ植物を相手にするみたい…

「腕がもげた！」 「全然もげてないじゃん」

「耳がもげた！」 「全然もげてないじゃん」

「お前なんか、鬼が持ってる金棒のイガイガの部分くらい価値ないよ」 「価値あるじゃん。鬼の中で一番価値あるじゃん」

「例えば、実力のある高校球児がポケットから便座カバーを取り出して、汗を拭いたとする。その場合につくあだ名って、やっぱり『便座カバー王子』なんだろうか」 「たぶん『便座カバー』だけだと思う」

北海道の広大な大地が産んだじゃがいもを使いました。 ははははは、狭いな。こっちはアイダホの広大な大地が産んだじゃがいもを使った。 へー、なら私はカナダの広大な大地が産んだじゃがいもも使っています。 二箇所言うとは小ずるい。 いいえ、全くずるく…

「できちゃった」 女が腹をさすりながら微笑むと、正面であぐらをかいて座っていた男がしょうゆを吹き出し、むせ込んだ。 「二ヶ月だって」 呼吸に苦しみながらも、数年がかりで望んでいた吉報に男は嬉しげな笑みを浮かべて涙をこぼす。その大粒の涙は、頬を…

力士が首を吊ろうと足下の段を蹴飛ばすと、荒縄の輪ではなくもっと幅広であたたかな何かに首を締めつけられた。息苦しさはあるがどこか落ち着く。この首の締めつけには覚えがあった。 死の恐怖に閉じていた目を、宙に浮いたままの力士はのろまに開く。 目の…

あいつは天才だった。 手を上げろと言われれば三秒以内にどちらかの手を上げるか、あるいは両方の手を上げた。歩けと言われれば三秒以内に歩いた。叫べと言われれば三秒以内に叫んだ。鼻をヒクつかせろと言われれば三秒以内に鼻をヒクつかせた。目を閉じろと…

老いぼれに興味はない。 藁ぼうきのシゲルはそう言うと、ちりとりのヒラオへと正確にごみを運ばなくなった。 その様子を体感した所有者の除太郎は、この問題を藁ぼうきの老朽化が原因と判断し、シゲルを廃棄処分した。 ああ。 間抜けなシゲル、シゲル。 除太…

味噌だれを頭のてっぺんからかけられる仕事をしていると噂の私ですが、実際はごまだれを頭のてっぺんからかけられる仕事をしています。 ほら、肌を見てください。味噌だれの仕事をしている人と比べて、赤みが差していないでしょう。これが証拠です。

本州四国ライドにまたがって、今日も向かうよ落とし穴。 暗い景色がただ続き、落ちて落ちて落ちていく。 落下。 落下。 底に激突、本州四国ライド。 生々しく毛まみれの四足歩行のお腹から、超超超強烈なスプリング。 ぐんぐん上がって、落とし穴から出られ…

メロンパンが好きで好きでたまらない人に一週間ほどメロンパンを絶食させ、似たもの、たとえば頭の面に井戸の「井」の字のような交差模様が描かれたちょっと珍しい種類の画鋲を見せれば「メロンパンだ！」と言って食らいつくだろうか。それとも食らいつかな…

料理人が一つのキノコと出会う。 そのキノコは無毒だが、やたらと苦味ばしっていて食べられたものじゃない。しかし口から消えて少しすると、細い、独特で魅力的な味と香りの一線が現れる。 料理人は、その時間的にわずかな昇りに強く惹きつけられた。 試行錯…

この服は、正面からみると胸部中心に丸い小さな突起がある。シンプルながら色彩のセンスがよく、不思議と悪くないデザイン。 しかし背面に回ると、服としては巨大な構造物――折鶴が途切れたくちばしを人の背につけている。平面でなく立体のそれは、くちばしの…

メガネを外すと「３」の目になるのは、メガネを外すときに目の上下を腫らすような毒素が入り込むからだ。 状況が平面の中でしか確認できないため判別が難しいが、おそらくレンズフレーム内側には、目の周りを引っかくための毒爪があり、また、メガネ自体を直…

泡玉を指先で磨きたい。 けれど実際にそれをやろうとすると、泡玉はぷつんと割れてしまう。 繰り返していくうちに泡玉は割れなくなっていくが、それは、僕の指先についた洗剤が仲介をしているからであって、行為としては別のものだ。 僕は、指先で直に触れた…

上階に人が集まっているときに、階段の一部床に穴をあけ、底にたくさんのトゲを仕込んでおく。 階段から降りてくる人には穴が見えないので、注意を払えずにざっくり刺さる。 痛がっている人を見て、僕は、赤色のヘルメットに四文字の言葉が書かれた看板を掲…

あなたの評価は、ベークドエッグのベークド部分以下、ポーチドエッグのポーチド部分以上といったところだ。つまり、ジップロック以下、魚雷以上だってことだよ。（彼は自慢げに鼻を鳴らしている）

カントリーマアムにゴムのような弾力を与えます。 伸ばします。 カントリーマアムの弾力を元通りにします。 形を定着させるために、500Wのオーブンで20秒焼きます。（余熱はいりません） 完成。

十年近い付き合いになるあなたは、気付けば、西日暮里のことを「ポリ」と呼び、さらにしばらくすると「ポリス」と呼ぶようになっていた。 ああ。 あなたと会話をしていない間と間、あなたの身に何が起きたというのか。 焦りの混じった衝動に駆られ、私はあな…

ビニール袋を両手両足に装着すれば世界一スピーディーに移動できると聞いて実行してみたけど一向に速度は変わらない、情報のあったビニール袋屋の主人にサギじゃないかと文句をいう。 即答はとんでもございません、あなたは両手両足にビニール袋を装着してお…

国を出てきた私は現在米国生まれの英国育ち。日夜エリザベスやらを名乗る人物を慕いながら生計を立てております。 幸せを求めて英国へ。 はじめのうちは右も左もわからない愚かな私でしたが、さすが英国、この国のおかげで真実の幸せを知りました。 私が一回…

１．鶏肉は一口大に切り分けます。大根は皮を剥き、くし切りにします。 ２．フライパンに油を入れて熱し、鶏肉と大根を入れて炒めます。 ３．鶏肉の色が変わったら、カップ一杯の湯で溶いただし汁と、しょう油・みりん・砂糖を各大さじ１を加えます。 ４．ア…