その他

Q. あかペン先生へ。なんでにんげんには体おんがあるのですか。あかペン先生にも 体おんがあるのですか。だとしたら、なんで先生には体おんがあるのですか。す ごくいやです。先生がぼくらとおなじせいたいこうぞうをしているんだとおもう と、虫ずがはしり…

それはそういうもの

初め、サンタクロースがあの衣装を着る目的は違っていた。大きな袋は子供を入れるため、赤い服はもしものときの返り血対策。だけどあの日、子供の警戒心を解くために与えたおもちゃが、想像以上に美しい笑顔を生み出した。それ以来、サンタクロースは子供の…

水の中から手が出てくるので、それを捕まえて栽培する仕事をしています。 水はどこの水でもいいです。 水であれば、いずれその手は出てくるのです。 手の色は黒色で、それを引っ張ると肘のあたりで途切れます。 途切れたそこをぬるま湯につけます。 ぬるま湯…

ノベラゴン 3「そのうちの一人」

落ちる。 落ちる。 落ちる。 落ちる。 落ちる。 落ちる。 落ちる。 落ちる。 風がまとわりついてくる。長めに揃えていたボブカットはばさばさ乱れて焚き火のように怒髪をついた。ビル窓の反射に映る私の姿は、存分に顔の皮も釣りあがっていて、とても見てら…

ノベラゴン 2「始まり(終わり)」

ここを進むと何があるんだっけ。 ヨヨタは、延々と続く砂の景色と、自分と同じくずしりと汗にまみれたベレに目で尋ねた。 「……」 砂と砂、砂と砂と砂は相変わらず。 ベレはヨヨタの質問に気付いたようだったが、答えようがないのでヨヨタに視線を向けたきり…

ノベラゴン 1「夏のこの世の」

「イリギルギリ」 「イリギルギリ」 遠くの、窓のずっと遠くのほうで鮮やかな破裂の音が生まれては、生まれては、フェードアウト。フェードアウトに重なって次に次へと音は生まれて、生まれて、波形のリズムは複雑に、楽しげに。 色はわからない。でも、きっ…

真意と真意

一人の男が「饅頭怖い」と告白した。 それまで何物にも怯えない屈強な男を語っていた彼だけに、お前そんな間抜けた物が嫌いなのかと、周囲の小坊主は笑って彼を馬鹿にする。ちょっとの罵倒を混じらせながら、馬鹿にして、馬鹿にして、馬鹿にしまくる。 その…

母を訪ねず

子供の頃に始めた冒険は、気がつけば三千里を超える道のり。 母がどの町のどの地区のどんな家に住んでいるのか、なんてことはとうに知っていて、顔も声も見聞きして、会話だってしたことがある。だけど、いざ母と対面して「僕は息子です」と伝えるには何かが…

FOR ONE

犬の難解なおもちゃに隠されたもの (Exciteニュース) 友達のジョンが、誕生日のプレゼントに犬用のおもちゃをくれた。 僕は、さっそく飼い犬を呼んで遊ばせたんだけど、犬のビルマはその不可解なパズルに困り果てて、せっかくのプレゼントに噛み付いてヨダレ…

そのほか

1.嘘つき少年が「狼男が来るぞ」と叫び、町じゅうを走り駆け回る。 2.大人が少年を捕まえて「狼男なんていないよ」と言う。 3.さらに「夢ばかり見ていないで、君はもっとちゃんとした人間にならないとダメだ」と、切々と説教する。 4.堪りかねた少年、キレて…

なんとかなる

「おじいちゃんおまえクサーイ」

どうしようもない

「おじいちゃん生きてイナーイ」

どうしようもない

「おじいちゃんおくちダサーイ」

ある日の日曜

丑三つ時。白装束に身を包み、頭に鉢巻きを結びろうそくを固定した人物が、神社の大木に人形を押し当て、五寸釘を打ち込んでいる。 僕は、そんな怪談のワンシーンに憧れを抱いていた。月と炎のみに照らされる、あの激情に満ちた陰気な姿をコスプレ気分でやっ…

「探しています!」

家の鍵を落としてしまいました。 鍵は一般的な金属製のもので、やや色汚れのある白クマの人形がついています。 拾った方は、ぞぞ市加賀山2丁目8番229号の小田までお届けください。赤い屋根が目印です。 なお、平日は朝9時から夜6時過ぎまで家に誰もお…

突如は、突如として

僕が街中にいて、そして意味もなく裸になったのは冬のいつ頃だっただろう。 当時、僕は架空のイソジンを扱う会社を経営していて、特別何か苦労することなく一生遊んで暮らせるだけの稼ぎを得ていた。仕事を通じて出会った、可憐で、人間としての芯をしっかり…

その他

本日未明、都内で不審火が発生。家屋が全焼し、住人の馬尾俊人さんは全治3ヶ月の重症を負い市内の病院へと運ばれた。俊人さんの両親は偶然外に出ていたため怪我はなかったが、息子が生き延びていることが不服であるとし、近く、消火作業に当たった消防員ら…

偽りの湖畔

左腕を前方に突き出して、右腕は後方に思いきり引いて、その握りを解き放って、左腕は握りの形のまま架空の武器に従って下りていく。目線はずっと先、犬の散歩をしている夫人。 息を吐く。大げさに「ふぅ」と音を出すように頬まで膨らませて。 何も起こらな…

とある余白

横向きに首を振った。維持になって横向きに首を振った。 馬鹿じゃないのかという目で見られた。 でも、そうすることが自分にとっての救いになるんだと思い込んで、僕はとにかく、右に左にがむしゃらに首を振った。 結果、僕は生きている。 両手両足を鉄の台…

世迷いばなし

テレホンカードを水だと言い張る。 テレホンカードを水だと言いはる。 上のは文語。 下のは口語。 京都弁。 上のは淡白な印象を受けるけれど、下のは人間に対する尊敬の念が見える。 うたわれる譜面は同じでも、発音が変わるだけでどこかが変わる。 言葉って…

空白一周年

Johnは机を強めに叩いて立ち上がると、few!と叫んだ。 隣で読書をしていたCaleraも、つられてfew!と叫んだ。 Luもfew!と叫んだ。 けど、部屋のコンクリートに埋め込まれた人骨は、何も語ることなく、John達は静かに元の姿勢へと戻るしかなかった。 「そう」 …

推理もの(この探偵のIQは常人の倍を誇ります)

「……ということは、この殺人事件の犯人は松田さん、その具体的な証拠を持つあなたということになる」 「た、たまたまだよ探偵さん。たしかに僕は被害者である伊東さんの生首を手に持っている。けど、それだけで犯人と決めつけるのは早計じゃないだろうか?」…

つよ気

ひずんだボールを地面に投げつけると、予想だにしない方向に跳ねる。 それを知っていて、僕はボールを地面に投げつけている。 投げつけを続けている。 僕から大切なものを奪ったあいつに、いつか僕の責任の外で復讐できることを夢見ながら、僕は、ひずんだボ…

ある日の立法

新たに「風呂場でジャンプしてもよい」という法律が立てられたら、一応、誰もが1度は風呂場でジャンプしてみると思う。 以前から風呂場でのジャンプが禁止されてないと知っていても、これまでの人生で1度2度は風呂場でジャンプした経験があって、濡れた風…

二人の話

体が硬くて、巨大で、頭に角が八百本くらいある生きものって何だ。 大仏。 お、正解。よくわかったね。 そりゃあわかるさ。 大仏の頭にあるあの丸い突起は本来怒髪のように尖っていて、半径五万メートル以内に近寄ってきた悪魔を首振りだけで追い払っていた…

敵意はないよ

転勤初日、新しい職場へ向かおうと下宿を飛び出てすぐのこと。 見知らぬお爺さんがFeel so nice! と声をかけてきたので、私もFeel so nice! と返した。 何をもってFeel so nice! なのか、そもそもFeel so nice! の意味自体もあまり理解できていなかったが、…

新宿レッツゴー広場は噴水脇特設ステージにおいて、2006年10月25日(水)から翌日曜日まで、世界に誇れる日本のマンホール百選〜こんなに楽しいマンホール!〜を開催いたします。 期間中は、日本全国からお借りしてきたご当地マンホールを自由に閲覧できるほ…

「勘弁してくださいよー」

「今日のゲストは、スーパー鍋包丁のお二人でしたー」 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」 「告知させてくださいよ」 「えー」 「僕らはこのために今日やってきたんですから」 「そうですよ」 「仕方ないなー、じゃ手短にね」 「はい。えーと、フィンランド…

フリーマーケットを開いている叔父についでに売ってと物を渡したその直後に他人が物を買っていった、僕はラッキーと声を上げ叔父に先ほどの支払いを求めたが、それはできないと拒否される・フリーマーケットのルールでもあるのかな・そう思って叔父に後でち…

ソギー

犬は自身のからだを本体だと思い込んでいるが、その実、犬の本体は飼い主である私である。 顔が似てきたり、声が似てきたり、肩の角度が似てきたり、歩くのに前足を使わなくなったり、前足の指が細くなって伸び、数も五本に増え、頭以外の毛が薄くなり、安売…