二人

 北海道の広大な大地が産んだじゃがいもを使いました。
 ははははは、狭いな。こっちはアイダホの広大な大地が産んだじゃがいもを使った。
 へー、なら私はカナダの広大な大地が産んだじゃがいもも使っています。
 二箇所言うとは小ずるい。
 いいえ、全くずるくはありません。
 それならば、こっちはロシアの広大な大地が産んだじゃがいもも使うつもりだ。
 予定ですか?
 予定の何が悪い。
 絵空事を言うのであれば、もっと広大な大地が産んだじゃがいもを使ってはいかがですか。月とか。
 お前は予定と空想の区別ができていない。
 いいえ。現に、私は月の土地をいくらか持っているので、月の広大な大地にじゃがいもを産ませることは不可能ではありません。
 ぬぅ……。
 私の勝ちですね。
 いや待った。私は金星の広大な大地でじゃがいもを産ませることにする。
 へー、土地は持ってるんですか。
 まだ持ってはいない。が、しかし、いずれは月と同じように、金星の土地も販売されるようになるはずだ。時が来れば購入し、私は金星の広大な大地にじゃがいもを産ませようと思う。
 なるほど、それは丁度良いですね。
 ん?
 私が月の土地を買ったのと同じ会社が、偶然にも金星の土地を販売しているのです。月の土地よりは多少割高ではありますが。
 ははははは、じゃあ今からそれを購入だ。
 ……。
 どうだ、私のほうが広大だ!
 なら私は、地球の広大な大地が産んだじゃがいもを使おうと思います。あなたは地球以外で育ったじゃがいもを使ってください。
 なんだと?
 同じ土地を選んではいけないルールですから。
 それを言うんだったら、お前が地球を選ぶこともルール違反じゃないのか。
 話し合いの最初に比べて、視点はもっと巨大で、グローバルなものへと変化しています。アイダホやロシアなんて小粒な一部地域など、今では「土地」としての扱いにならないのです。
 そんな馬鹿な!?
 私はこの地球をじゃがいもの最終的な産地とし、これ以上の広大さを求めません。あなたは、地球を超える広大な大地をいくらでも買収し、いくらでもいくらでもじゃがいもを産ませて構いませんよ。ほら。
 横暴だ!
 横暴ではありません。横暴であるわけがないでしょう。あなたがまず予定の話を持ってきたのです。今の状況は、あなたが言った直接の延長ではありませんか。
 ぬぅ……。
 ほら、金星でじゃがいもを作るんでしょう。作ってみてくださいよ。ほら。
 ……。
 ほら、ほら。
 ……。
 ほら、ほら、ほら、ほら。
 ……。
 ふふ。
 ……。
 まさかそれほどまでに涙を溜めてしまうとは。
 ……。
 まったく。一体どちらが空想とこちら側の区別ができていないんでしょうか。空想の話ですよ、空想の話。
 それじゃあ……。
 そんなに弱々しい声をあげないでください。嘘ですよ。嘘に決まっているじゃありませんか。さぁさ、地球の広大な大地が産んだじゃがいもを使って、二人で何か薄揚げめいたものでも作りましょう。