それはそういうもの

初め、サンタクロースがあの衣装を着る目的は違っていた。大きな袋は子供を入れるため、赤い服はもしものときの返り血対策。だけどあの日、子供の警戒心を解くために与えたおもちゃが、想像以上に美しい笑顔を生み出した。それ以来、サンタクロースは子供の笑顔を愛するようになった。


今、サンタクロースは子供の笑顔を見るために各地を奔走している。誘拐を本職としていた時代に得た技術で子供をさらい、身代金をむしり取る。そして季節が来れば、子供たちの笑顔を見るために、いくつもの家を訪ねておもちゃを渡す。


今、サンタクロースの服が赤いのは血のごまかしのためではなく、少しでも出費を抑え、よりたくさんの笑顔を見るためである。元はスカイブルーの激安フリース。身代金を奪って不要になった子供の色は、ファーを縫い付ければ意外と映える。ファーと糸は、クリーニングの代金よりも安い。


赤は偶然の輪廻。むしろ色は濃くなったか。


いつからか根付いた期待も相まって、サンタクロースは金のため、赤を保つために連々日々子供をさらう。より美しい芸術品に会いたくて、間引く。稼ぐ。


今日も。


明日も。


ずっと……。






各自、なんか不気味で味のある絵を想像してください。
この作品の出来如何は、各自読み手の想像力にゆだねられています。