無になる

 泡玉を指先で磨きたい。
 けれど実際にそれをやろうとすると、泡玉はぷつんと割れてしまう。
 繰り返していくうちに泡玉は割れなくなっていくが、それは、僕の指先についた洗剤が仲介をしているからであって、行為としては別のものだ。
 僕は、指先で直に触れたい。
 触れて、表面をまわる美しい虹の価値をさらに高めてやりたい。
 僕自身。
 何かが変わる気がするんだ。
 例えば、脚が3cm伸びたりだとか、億万長者になったりだとか、友達から呼ばれるあだ名が格好良くなったりだとか。
 うん。