未確定要素
夜中に目をさまし、まず視界に入ったのは大きな箱だった。
以前、通販でパソコンを買ったとき、一式が入れられていたダンボール箱だ。大人が入れそうなくらいに大きい。寝ている彼の姿勢からすると頂上が見えず、どこか不気味な感触がした。
ふと思う。
もしかしたら、誰か入っているんじゃないか。
馬鹿らしい発想だとうすく息を吐く。しかし、静かすぎる場に寝起きのうつろな頭は感化されて、次第におびえが現れる。そんなはずはないと彼が人生で得た情報から否定しながらも、おびえは止まらず、上昇し、遂には震え、涙までこぼしてしまう。
可能性を否定できない自分がいる。そうなってしまっては事実を確認するまで、怖くて眠れない。
彼は、上の開きっぱなしになったダンボールに一進一退を繰り返し、そして空に色がつく頃になって、ようやく箱を覗き込んだ。
何てことはない。そこは寝る前と同じ中身。
色の悪い子供がひとつ、ふたつ、みっつ。減ってもいないし、増えてもいない。
ほっと息をつく。
彼は元の姿勢にごろんと戻ると、今の大まかな時間と目覚しをセットした時間とを照らし合わせながら、深い眠りの中へと入っていった。