推理もの(この探偵のIQは常人の倍を誇ります)

「……ということは、この殺人事件の犯人は松田さん、その具体的な証拠を持つあなたということになる」
「た、たまたまだよ探偵さん。たしかに僕は被害者である伊東さんの生首を手に持っている。けど、それだけで犯人と決めつけるのは早計じゃないだろうか?」
「……?」
「なんて説明すればいいかな……。ああそうだ、これは単に昼食を米じゃなくてパンで済ませたっていう、その程度のことなんだ。わかるかい。持っていることと持っていないこと、2分の1の確率だよ。2分の1の偶然なんだ」
「……」
「探偵さん、ここ数日の食事メニューについて覚えているかい。米派だとかパン派だとか、どちらか一方に偏るような好みがあるのなら和食と洋食で比べてみるとか、肉と野菜の量ではどちらが多かったかとか、食事じゃなくても、玄関から出るときの一歩目が右足だったか左足だったか、そんなのでもいい」
「……」
「それと同じことさ。今回のこの件も2分の1の確率なんだ。わかるだろ。そんなに難しいことじゃない」
「……」
「僕は今日サンドイッチを食べた、右足から靴を履いた、駅のホームで肩を当てることなく歩いた、ほんのたったそれだけの日常的に起こりうる偶然なんだ。つまり、僕がこうして伊東さんの生首を持っているという今現在は、状況証拠として成立するわけがないってことだ」
「……」
「納得がいかないって顔をしてるね、探偵さん。でも事実としてそういうことなんだ。理解の度合いに関わらず、ね」
「……」


 即日、松田は持っていた生首が物的証拠となりっていうか現行犯で逮捕された。