ある日の日曜

 丑三つ時。白装束に身を包み、頭に鉢巻きを結びろうそくを固定した人物が、神社の大木に人形を押し当て、五寸釘を打ち込んでいる。
 僕は、そんな怪談のワンシーンに憧れを抱いていた。月と炎のみに照らされる、あの激情に満ちた陰気な姿をコスプレ気分でやってみたいとずっとずっと考えていた。
 そして今日、憧れを実行するための道具が通販によって揃った。
 あとは丑三つ時を待つだけ……、だけど、いざ冷静に事を考えてみると、実行にはいくつもの障害があった。


・神社が近くにない ……庭でやろう
・深夜二時っていつも寝てる ……昼間にやろう
・木がない ……木の板なら何枚かあった
・白装束のサイズが合わない ……質感的にはアロハが似てる
・鉢巻きの締まりがしっくりこない ……ねじってから巻いてみようか
・ろうそくが熱い ……別にいらないんじゃないか
・人形が思ったより可愛い ……別にいらないんじゃないか
・恨みごとがない ……いいことだ


 トンテンカントンカン。
 トンカンカントンテン。


 ちょっとした棚が出来上がった。
 まあ、当初の目的通り何かのコスプレができたわけだし、大満足ではある。