洋食と洋食の不具合について

 近所のパン屋はカレーパンの種類が多い。
 はじめて訪れた数年前にはただの牛肉カレーだけだったのが、いつの間にか牛肉の大きい角煮カレーが追加され、いつの間にかポークカレーが追加され、いつの間にかチキンカレーが追加され、いつの間にかツナカレーが追加され、今では7の種類を抱えるようになった。これら中身を入れ替えて作る揚げパン形式のカレーパンの他にも、ナン風の生地にカレーを塗って焼いたナンカレーや、くり抜いた小さなフランスパンの中にカレーを詰めて釜で焼いたらしい釜焼きカレーというのもある。
 この店はとにかくカレーパンが好きだ。年中カレーパンの新商品が出てくるし、逆にカレーパン以外の商品はいつでも突然消えていく。
 で、ここで売られているカレーパンは、前述の揚げパン形式のものが大半。どれも似たような見た目をしていて判りづらいのだが、一応、カレーパンの中身によって、輪郭が大福状とラグビーボール状とで違っていたり、パン粉の粒の大きさが違っていたり、ある特定のカレーパンの場合は香りのうすいアーモンドが散りばめられたりしていて、揚げパンという単色の中ではやはり判りづらいものの、多くは飾りによる差別化が図られている。
 けれど、何だろう、最近は差別化のパターンに手詰まりを起こしているのか。しばらく商品棚から消えていて、最近久しぶりに復活したチキンカレーパンがすこし妙だ。
 輪郭はこの店の中で一番割合の高いラグビーボール状、けど、そんな輪郭に焦点が合うよりもまず、カレーパン本体の上にどんと構えた厚切りのラスクが目立つ。
 すごい厚切りだ。上下幅が1cm近くもある。そのくせカレーパンの厚みは3cmちょっとで、ラスクの面積とカレーパンの面積もほぼ同じなので、体積の割合で考えてもすごい。ラスクはフランスパンを輪切りにしたもので、普段、この店でガーリックを塗り、砂糖バターを塗って単体の商品として売られているものよりも巨大に感じる。商品としてのラスクは不透明な模様の入っての袋越しでしか見たことがないので、実サイズに差はないのかもしれない、が、カレーパンの種類を伝えるための飾りとしては、このラスクはあまりに存在が大きく、そしてすごい邪魔に思えた。
 事実、食べてみたらすごい邪魔だった。
 横暴とすら思えた。
 ヒトラーかよ、って、当時それは思わなかったけど今になってふと頭の中をよぎった。意味はよくわからない。(考えたくもない)
 ともあれ、なぜ以前のチキンカレーパンのように無難な装飾をしなかったのか。隠居中にほかのカレーパンがデザインを奪ったわけでもないのに。
 もしかすると、この店はカレーパンが好きというよりも、カレーパンの飾りつけが好きなだけなのかもしれない。追い詰められてやったと思っていたラスクも、センスがオカンアート的なだけで、本人にとっては非常にクールなのかもしれない。
 まぁ、どんな理由を見つけたところで結局は邪魔を感じたんだけど。チキンカレーの部分とパンの部分がすごい美味しかっただけに、もったいなく思う。