浮遊感について
ポストから取り出した二枚の葉書を、玄関から内のフローリングへと投げた。
宙にレールがあるかのように滑らかに移動していく葉書は、微妙な曲線を描きながら、地面へと落下していく。
落下の方向は縦。
床に到達した二枚の葉書は、カタタンと音を立ててその場に重なり合う。
もしかすると、葉書が傷んだかもしれない。
僕は操作不能な運の動きを恨んだ。
けど、冷静になって考えると、どうせこの葉書は自分宛てのものではないし、コンビニに行って数分で帰ってくるであろう自分が居間に持っていかなくてはならないものだ。
二枚の葉書が水平に近い角度で床に接触し、それぞれがよくわからない隙間へと潜り込んでいかなかったことは、喜ぶべきなのかもしれない。
良い状況。
うん、感謝感激雨あられの状況だ。
「……感謝?」
こんなの一体誰に対して感謝すればいいのだろう。
ふと現れた自分の言葉尻を捕まえて、僕は自分の脳みそに螺旋状の棒を立ててぐるぐると回してしまう。
やがて着いたコンビニ。
僕は目玉の中をうつろに伸び縮みさせながら食事をレジに運んだ。
待ち時間のあいだ、普段は気にもしない募金ボックスがふと目にとまったが、釣り銭はびた一文も入れる気にならなかった。