その名称
フェニックスだ。
それはパン生地が体の多くを占めており、形は巻貝のようだった。残りはチョコクリームである。
これはフェニックスではなく、チョココロネという菓子パンではないのかと一瞬思った。しかし、これは間違いなくフェニックスなのだ。手前にあるプレートにそう書かれている。つまり、これはフェニックス。プレートは嘘をつかない。
本物のフェニックス…。
伝説の存在に出会えたことへの感動に浸りながら、僕はうすく息を吐く。
昔の人は、このチョココロネみたいな生きもののどこを見て、鳥の一種であると解釈したんだろう。表面の照りが光る翼のように見えたから、そう考えたのか。バッグの中に入れて運んでいるうちにチョコクリームがはみ出し、翼や脚、くちばしのような形に偶然(必然?)張りついたからそう考えたのか。
星座といい、昔の人の想像力の深さには驚かされる。彼らの想像を想像するのは楽しい。
フェニックスを手に取ってじろじろ眺めていると、店員さんに注意された。買い取りも要求されたので、ついでにメロンパンとベーコンエピ、カメレオンをプラスチックのトレイに乗せてレジに持っていった。カメレオンは、ひし形のカレーパンのように見えた。