ウェブサイト

 まず、サイトを一つもっておく。この基礎となるサイトの内容は何でもいい。
 次に、サイトを二つ同時に立ち上げる。
 立ち上げるサイトの片方は、メモ書き程度の日記をつけ続ける一般的な日記サイト。もう片方は、その日記サイトの更新に張りつき、他人のような口調で逐一コメントをつけ続けるストーカーまがいの日記サイト。それぞれ、基礎サイトから「サイトを立ち上げました」とリンクを張る。
 被ストーカー側のサイトが日記を更新すれば、ストーカー側のサイトはその内容を追いかけてコメントを更新する。被ストーカー側のサイトが更新を停止すれば、ストーカー側のサイトは何も書かなくなり、被ストーカー側のサイトが更新を再開すれば、ストーカー側のサイトは、やはり数分の時間差をもってその内容を追いかける。
 ストーカーのコメントは、特に変わったものではない。誹謗中傷やセクハラではなく、好意的な感想の連続。コミュニケーションを求めるわけでもない。自意識のない被ストーカーは、何にも気付いていないような姿勢で日記の更新を続ける。
 一人が行う奇妙ななままごとは、進展なく、何年も何年も続いてゆく。
 基礎サイトの役割は、始めにストーカーと被ストーカーが同一人物であることを説明した時点で終了しており、以来関わりはない。あとは好きに更新するなり、なんだったら更新を停止してもいい。証明がインターネット上に残ればいい。
 この企画は、ストーカーと被ストーカーの関係性を楽しみ、先の展開を期待するものではない。
 見始めはそういう考えもあるだろうが、一年、二年とログが続いていくうちに、その可能性は無いことが判ってくる。この平行線の関係が、完成形なのだ。
 自分で書いた字のすぐ横に逆手でマルを付けるような行為を、見せびらかして何年も続けている管理人。サイトの関係を知って、ようやく覗く彼自身の薄気味悪さが狙い。それぞれの日記の内容は、普遍的でつまらないほど良い。自然さの演出がグロテスク。コストパフォーマンスは非常に悪い。