虚無の言

 未来創造堂という番組で、魚群探知機を開発した人のドラマが放送されていた。
 その開発が難航していたことについて、テスターとして船に乗っていた開発者の弟が、本職の船乗りに何度も海に投げ落とされては「探知機なのかインチキなのかわからない」と罵られていたと面白げに語っていた。開発者である兄は、すぐ隣にいながら椅子に深くもたれかかって無表情だった。笑っているのは、エピソードを語る弟だけだった。
 なんだか、とても切なかった。
 ドラマの流れからしても弟の名言は明らかに浮いていて、奇妙な孤独感が映像から立ち昇っていた。
 どうにかして、この船乗りの発言(本当に船乗りが発したものなのかは疑わしいものがあるが)を活用していきたいと思った。