自転車走行中

 バス停に座っているお爺さんの髪型が、リーゼントに見えた。
 ただ電柱で一旦隠されてからまたお爺さんが出現すると、横分け気味のさらさらヘアーだったので、おそらく自分が見たリーゼントの一瞬は、風で舞い上がった髪が偶然にもリーゼントの形を成していただけなのだと考えられる。
 残念だ。貴重な一瞬を見れたのは嬉しいが、どうにも人間自身の面白みい欠ける。あのお爺さんはつまらない。
 あのリーゼントが一瞬ではなく、電柱を通りすぎてから現れたあの横分けが一瞬だったらいいのに。すなわち、突如として上からやってきた強風によりリーゼントが潰されてあの横分けになったわけだ。
 でもそれはそれで超貴重な風の流れというか、不可思議なバス停の屋根の仕組みというか、興味はそちらの方へと向いてしまい、結局、リーゼントのお爺さんなんてどうでもよくなる。
 やれやれ。どうあってもつまらないお爺さんだ。横分けめ。