このあいだ

 夕食後、小腹が空いたので冷蔵庫にあった賞味期限切れのパンを食べた。
 数日が過ぎたその菓子パン。匂いをかいだ感じでは普通だったし、安心して口に入れたのだけど、なぜだろう。ちょっとしょっぱい。
 舌先で感じた瞬間から広がる不安。けれど味自体は食品としてそれほど異常なものではないので(ポテトチップスやチャーハンなど、しょっぱい食品ならたくさんあるし)、そのまま全部食べた。
 するとどうだろう。食べ終えた直後は何もなかったのだが、風呂に入って、部屋に戻ってしばらく落ち着いてから、異常はやってきた。
 腹の奥がぐるると重く回転しているような感覚。喉の奥の半開きな感覚。かるい頭痛。やけに喉が渇いている。水を飲みたいとは切に思うのだが、腹の張ったような感覚があり、胃はそれを受けつけないような気がする。
 重い症状ではない。だが、喉の渇きの強さだけは異常だった。渇きどころか、一晩カラオケで過ごしたような毛羽立った刺激すらある。
 食中毒というのは、こういう症状もあるのか。上下の排泄と頭痛だけかと思っていた。その他の症状は病気やキノコの担当かと思っていた。食べたパンの原材料名を思い出そうとするが、読んだ記憶がないので小麦粉くらいしか出てこない。腐っていたのなら、カビも原材料に追加されるだろう。くそ。カビめ。キノコみたいなやつめ。カビめ。
 畜生などと思いながら、そのまま部屋でテキトーに本を読んで熟睡。朝起きるとまだ喉は痛かったが、おそるおそる水を飲み、喉飴を舐めていると完治した。(つまり、非常にライトな食中毒にかかりましたっていうそれだけの話。あまり食中毒って遭遇したことなかったから、嬉しかったんです)