見える景色

 耳がひんやりとする。
 視界に映るのはいつものベッドに、テーブル、本棚、みかん、人間。
 床に寝転びながら思うのは、見える角度が変わると印象も変わるんだなぁ、ということ。いつも触れているものばかりなのに、なんとなく違ったもののように思えてしまう。
 ベッドメイクは完璧なのに、ベッド自体からは寂しげな雰囲気を感じる。テーブルと、その上に置いてある食事についても同じ。
 本棚から本が垂れているのを見ると、普段よりも目立って汚く思えてしまう。潰れたみかんも、どうせフローリングだしとは考えずに、急いでそれを除去して床を拭かなくてはと考えてしまう。
 でも今日は疲れたし、できれば明日にしたい。
 見覚えのある後頭部から出てくる血を指先でいじくりながら、ぼけーっとしている私。