航路をすすむ

 マントを開いた。マントは、ばさばさと音を立てながら背中のほうに膨らんで、僕が落ちていくスピードにわずかな制限をかけた。
「気持ちいいなぁ」
 肌をいためる風が和らいで、ようやく見えた街並み。いつも行動していたこの場所も、今の高さから見るとこんな程度の大きさなんだなと思うとどこか感慨深いものがある。
 僕は、こんな程度の場所で頑張ってきたのか…。
 迫り、巨大化していく街並みを意にも止めず、僕は鋭角にアスファルトへと突っ込んでいく。所詮はただの布で仕立てあげたマント。僕を助けるには抵抗が弱すぎた。だから選んだ。