[] 退屈なおとなの退屈

 ゲーム内に住まうキャラクターがいくら傷付いたり死んだりしても全然平気。
 でも、セーブデータの消失だけは怖い。
 同じゲーム内の出来事でも、これは現実に攻撃がはみ出ている。
「時間が無駄になった」
 ありがちな言葉が脳みそに生まれる。
 冷静になってみると、本当に無駄がはじまった起点はどこなのだろうと思うのだけれど、でも、大抵は無駄な時間をまた重ねようとしてしまう。
 ――
 こいつ死ぬんだ。
 あいつ死ぬんだ。
 あ、死んだ。
 死んだふりしてるけど、どうせまた出てくる。
 ――
 心は揺れない。
 それ自体は前からのことだけど、ただ、無駄が二つも絡まると、果物ナイフのような安っぽい刃物が具体化しているような、そんな感覚がある。
 見えない、痛みもない小傷が無数に増えていく。
 ――
 何してるんだろう。
 ――
 気がつくと僕は失血しきっていた。
 一つが外れるより前に、ゲームソフトは中古屋に並ぶか、捨てるように放られている。