奪われた私
「ピックパック」という語呂の良い言葉を思いついて、そこから物語っぽいものを書こうとしていた。
ただ、寸前で、ちょっと待てよ。
こんなに語呂の良い言葉だ。誰かほかの人が使っているかもしれない。
そう考えて「ピックパック」で検索すると、犬のフンを片付けるための容器ばかりが結果に表示された。眺めれば眺めるほどに、犬のフン、犬のフン…。
狙ってもいないダジャレ(しかも下ネタ)ほど恥ずかしいものはないので、名前をやや縮めて「ピグバック」に変更するも、なんだかネタ作りのテンションは上がらない。脳みその中で、犬のフンがびゅんと横切ったりする。
ああもういやだ、と名前をシンプルに「トミー」にしたが、どうせやる気は出てこない。そればかりか、トミーが犬のフンなんじゃないかと思えてきた。
トミーが犬のフンなら、おもちゃ会社のタカラトミーは、どういう意図があって社名に犬のフンなど掲げてしまったのか。よくここまで成長することができたな、存続できているなと思う。
事実として、トミーが犬のフンの意味をもっていないことは、そりゃあ僕だって知っている。
でも、もう、言葉は連結してしまった。
僕の中でのトミーとは、犬のフンを意味をもってしまっているのだ。下ネタなのだ。
そしてトミーから名前を変えたところで、その名前が新たに犬のフンの意味をもってしまう。それだけ、ピックパックの現実が僕にもたらした影響は強い。
もうしょうがないので、ネタは廃棄した。
幸いなのは、そのネタが、まだたったの二行しか書かれていないことだった。
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ピックパックは、良い家に住んでいる。
キャファーは、
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構成も何も決まっていなかった。
被害に遭ったのは、自分の中にあった「ピックパック」と「ピグパック」と「トミー」のイメージだけ。明日には傷口も閉じている。