水をこぼした

 ペットボトルの水を陶製のコップに注いでいたら、隣で大きなクシャミがあり、つい狙いを外してしまう。
 こぼれた水は、丸の形から八方向の直線を延ばして、まるでクモのようになった。あまりに見事にクモっぽかったので、うわクモだ、と口が勝手にジェスチャーしていた。
 しかし、いざコップを移動させて水滴の跡を見ると、そこにクモはおらず。
 中央に大きな丸が一つあり、そこから西にV字型に二本の直線が延び、コップのあった南に球根のような底太りの線があるだけだった。ほかの方向に延びたはずの五本の直線は、ただの細かい点になってそこらに散らばっていた。
 クモの形状ではなく、アヒルの横っつらのようになっていた。しかも首の役割となる底太りの線は、クチバシとはやや逆方向に寄って生えていたため、首を不自然に突き出しているように見えた。
 志村けんの疑問顔のようなアヒル
 志村けんのことは好きだが、どうでもいいアヒルの要素が混じり、当初期待していたクモでもない。がっかりだ。どうせ期待を裏切るなら、リアルに志村けんの顔が描かれていてほしかった。
(ただ、たかが水をこぼしたくらいで志村けんの顔が克明に描かれたら、志村けん本人に何事かあったのではないかと思って心配になるかもしれない。友人に電話をかけ、水をこぼして志村けんの顔が出現するかどうかを確認してもらったりして(もし志村けんの顔が出現したなら、即座にテレビを点けてニュース番組を確認するだろう。そのとき、本当に志村けんの身に何か起こっていたとすれば、志村けんとこぼした水の異変、どちらが優先して報道されるだろうか(どちらにせよ、志村けんにまつわる新興宗教が誕生しそうに思(やはり宗教内の挨拶は「アイーン」なのだろうか)(上層部の衣装は、はかまに白塗りか、それともピンク色の衣装に濃すぎるひげか(コント衣装を本気で纏う姿は、コミカルなようでかなり怖そうだ(恐ろし(狂気)い))))))う)))))))))))))))))))))))))−終わり−)