歩いていると、背後からブロロロロと単車の音がしたので端のほうに寄った。
でもその後にやってきたのはただの自転車で、ブロロロロという音は、その操縦者の声だった。気付いた後も、ふとすれば単車の音だと勘違いさせられるほどクオリティの高い物真似だった。
すごいなぁ。でも、何でこんなことをしてるんだろう?
「楽しいからさ」
心でひっそり思ったことに、テレパシーの声が返ってきた。
ブロロロロの声は返事のときも途切れずに、そのまま彼は遠ざかっていく。既に小さくなった後姿を見ながら、僕は「器用な人だなぁ」とぽつり呟いた。