私に着れない服はない。
 そう豪語した彼女は服を次々と着ていく。小学生の服を着て、赤ん坊の服を着て、チワワの服を着て、ミジンコの服を着た。一般的な成人男性の服を着て、やたら背の高い成人男性の服を着て、やたら背が高くて太っちょな成人男性の服を着た。
 元々の体型と大きさがミジンコレベルなので、ミジンコの服以外は服に乗られているだけに見えたが、とりあえず僕は誉めた。
 その誉めている様子があまりにとりあえず感に満ちていたからか、僕の仕草を受けて彼女は怒った。そして、床に触れていた人差し指を登ると付け根の毛穴をひとつ埋めてきた。
 僕はとりあえず困った。
 僕の仕草に彼女はまた怒ったようだったが、それ以上は何もできないようだった。