水太鼓

 シャワーを浴びていると、耳にしぶきの一部が入って「トゥン」と安いハイタムのような音が鳴った。
 耳の中には鼓膜があり、それを水滴が打ったから太鼓のような音が鳴る。とても単純で自然なことなんだけど、なんか不思議だ。不思議な魅力を感じる。もし自分が後継ぎしたがらない太鼓職人の息子であったなら、このことがきっかけで太鼓の音が気になるようになり、父親の職場にふらっと姿を現しては作業現場を眺め、太鼓に使う鋲や皮の1つ1つを意識するようになり、最終的には「親父、オレにも作れるかな…?」などと呟くように決意を吐いたりするのだと思う。熱い。自分の家系や友人関係に太鼓職人が1人も含まれていないのが悔やまれる。仕方なしに、パーカッシブな印象のある音楽CDを戸棚から出して聴いている今現在。