shonobi

 暇潰しにアクセス解析でも見ようと思い、shinobi.jpのサイトへと飛ぼうとする。
 ブックマークに入れていないのでGoogleで「shinobi」。
 有名所なので、これだけで簡単に出てくる。


 でも今回はド頭に来ずに、どこかの個人サイトの日記が一番上にきた。
 次も個人サイトで、次は海外のサイト。


 おかしいと思って自分の入れた検索ワードを見てみると、「shonobi」だった。
 しょのび。
 語感からして情けない。


 けど、こんな彼でも検索結果は3,450件もあったりする。
 海外サイトを弾いて検索しなおしても、511件。


 検索結果で読む話題は「shinobi」のことばかりなので、やはり「shonobi」は誤字なのだろう。
 しかし、日本人だけで511件である。


 たまにテレビで見かける芸能人の名前を入力すると、10万件なんてザラに出る。
 それと比べると511件なんて下も下。
 しょぼいかもしれない。


 ただ、陶芸家や鑑定士の権威、舞台専門のベテラン役者を検索したとしたらどうだろう。
 500件はおろか100件すら到達しない人間なんてザラである。


 しょのびは、彼らに勝っているのだ。


 もちろん、ネットでの浸透度合いがそのまま本人らの価値に繋がるわけではない。
 ちょっと話題にされただけでも増えるし、馬鹿にされても増える。


 しょのびに至っては、話題にされることも馬鹿にされることもわずかすら無かった。
 しかし、しょのびは彼ら人間国宝に勝っているのだ。
 たかが誤字のくせに。
 単体ではそれ以外の価値なんてないくせに。


 なんて素晴らしいのか。
 それぞれ意識することなく、いまいち一般的でない言葉が魅せるミスの乱発波動。


 無価値の重複。
 本来はゼロであるこの作業は、結果的に大きな価値を超えたのだ。


 彼ら歴史有るプロが人間国宝なら「shonobi」は誤字国宝だ。


 …。
 ただ、検索結果が多くとも無価値は無価値。


 検索ワードの文字が「shonobi」から「shinobi」に変わるのに、あまり時間はかからなかった。
 ていうか、散策してもあまり面白くなさそうだったのですぐ訂正した。
 訂正したらすぐにshinobi.jpに着いた。
 やったー。
 終。