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好きな食べものは何、と尋ねられて「味の素」と答える人間は信用できない。
たしかに味の素はいろいろな料理にうまみ成分を与え、美味しさを増してくれる。調理済みのものに使用するとなると、調理した人間からすれば気分は悪いだろうが、まぁ、これも悪いことではない。
問題は、彼らの精神にある。
食卓に味の素を見つけたときの「使いますか」という言葉。前述の回答をしたがる人間に限られるのだが、あれは心づかいを主とした行動ではない。もっとじっくり、疑いをもち疑いをもった疑いをもって疑いつつ心の内を覗けば「俺、味の素の美味しさ知ってますよ」という食通ぶったアピールが見えてくる。
彼らはとても馬鹿だ。なぜなら、味の素が世界最高の調味料というのは誰もが知っている。西暦2008年、今になってこの情報を叫んだところで人気に繋がるとは到底思えない。
が、しかし、冷静になって根本的な決まりごとを思い出せばわかる通り、罪は罪だ。
味の素の価値に寄り添って食通をアピールするというグズな行為は、味の素を食事以外のことで利用しているということだ。それはつまり、日本国憲法第一条、聖書一ページ、コーラン、ヒエログリフ、三国志、あらゆる序文、あらゆる風の音の再生速度をスローにして音量に変化を与えたときに聞こえる人類共通の言語列、「味の素は食事と富士山以外に用いてはならない」、地球にヒトが誕生したその瞬間から存在している絶対的な決まりごとに反している。
私は言ってやりたい。
おい貴様、食通をアピールしていないなどと嘘をつくんじゃない、どこをどう見たって貴様は味の素を利用して食通をアピールしているじゃないか、おい貴様、わかっているのか、わかっているだろう、現世の神たるあれを料理と富士山以外に振りかけてはならないんだ、特に自分に振りかけるなどというのはあまりに愚かで怠惰で卑怯な三国志気取りの、
おい!
聞いているのか!
まったく、だから貴様のような脳みその腐りきったグズと話すのは嫌なんだ、忠告してやってるんだぞ、貴様のような決まりごとも守れないグズでもグズなりの誇りをもって人生を生きられるように、
……、この野郎、先輩に手を出すとはなんてやつだ!!
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
くそ!
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
なんて強さだ!
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
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……。
(ドッタンバッタン)
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……。
(ドッタンバッタン)
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(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
う、……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
(ドッタンバッタン)
……。
……。
……。
……。
それもそうだけど、好きな食べものは何、と尋ねられての回答が調味料っていうのは人として信用できない。