無感触な空間

 夢の中で、ビスケットを早食いする主旨のテレビ番組を観た。
 途中から観たその大会は、ルール上、口の中にビスケットが残っていない状態で次のビスケットに手を伸ばさなくてはいけないらしい。水で流し込むことも許されておらず、同時に2枚以上のビスケットを口に運ぶこともルール違反である。
 大会の流れは、とてもゆっくりだ。
 看板に「早食い」の文字を掲げており、ギャル曽根ジャイアント白田など屈強な大食いタレントが出ているというのに、進行はこの上なくのろま。
 製作側のこだわりなのか、映像が早送りされることもなく、効果音や音楽をつけられることもなく、地道な映像が延々続く。
 選手の傍には司会進行役のタレントが立っているが、この状況を茶化すように触れてはいけないようで、至極正当な方法で戦いを盛り上げようと声を張り上げている。
「さぁ、遂にxx枚目へと突入しました」
「残りあとxx分」
「xx選手、苦しそうだ!」
 ただ、正当な煽りでこの大会を盛り上げることは相当に難しいらしく、上記の言葉が30秒置きくらいにループした。
 僕ら家族は、その番組を居間で観ている。こたつテーブルの上に乗った料理の品目からすると、きっと夕食の時間帯なんだろう。つまり、ゴールデンタイムの時間帯、体感でおよそ20分ほどの時間が、このビスケットの早食いに費やされていた。
 深夜枠ですら希望のないこの番組を、誰が求めていただろうか。
 この夢を作った本人ながら、製作者の精神を疑う。