運命の歯車が回りはじめた

 自転車に乗った学生服の男が、赤白色の何かに口をつけていた。
 生肉かと一瞬思ったが、よく見てみたら、コンビニとかで売っているただのいちご味のオーレだった。紙パックの色も、どちらかといえば桃白色だった。
 なんだ。
 でも新しい発見もあった。
 学生服の男が、どう見ても初老以上の年齢なのだ。顔に深いシワがあり、後ろ髪は白っぽい。服装の割に学生と思えなかったのはそれが原因らしい。
 上下黒色の学生服を着ているけれど、学生ではない。制服と同じく黒色の学生帽を被っているけれど、学生ではない。そもそも、この学生服は今の時代としては珍しいような気がする。黒色がやけに濃い。生地も分厚いのか硬いのかして、ごつごつした雰囲気がある。
 上り坂の向こうへと、異様な姿をした異様な人物が去っていく。
 もう一度、彼の手元を見てみたかった。もしかすると、本当に生肉だったんじゃないか。