夢のこと

 地べたに置いてあるラジカセ。中に入っているカセットテープは何だろうと思って、再生してみた。
 スイッチを押した瞬間、ラジカセに僕の顔が吸い付けられた。本体の正面から突き出たスイッチに、歯が強すぎるくらいに勝手に噛みついて、離そうとしない。ラジカセのスピーカーからは音が出ず、ただ内側からきゅるきゅると擦れる音が聞こえてきた。
 姿勢と力を込めることへの強制が続き、一部の歯は根元から揺れるような感覚をおぼえる。不安になった。
 機械を停止させなくてはという発想が生まれ、停止ボタンを押そうとする。しかし、口のすぐ横にあるそのスイッチはとても固くて下がらない。噛みつく歯の感触を頭に満たしながら、必死に必死に押して、ようやくガチリと重々しく下がってくれた。固定の感じがなくなる。
 強制から解放された僕は、ラジカセから上半身を遠ざけて、座りの姿勢になった。
 長音の息をつくと、顔の右側の歯が2〜3本ぐらつき、ぽろりぽろりと落ちて喉の奥へと向かおうとした。僕はその動きを舌先でくい止めると、手元に吐き出した。
 歯を見たとき、うわー、と思わず声が出て、どうしてラジカセからこんな危害を受けているんだ、と悲しく疑問した。
 歯の欠落は右半分のものが無くなるまで続いて、最後、あごを上下に動かし、片側の歯が着地しない感覚でさらに悲しくなっているところで目を覚ました。頭の流れはぼやけていたが、歯の確認は素早かった。